出張サロンは、自宅のサロンや店舗ではなくお客様のご自宅や契約しているホテルなどの施設へ直接セラピストが出向き、施術を行うサービスです。
スクールを卒業後、出張サロンを開業したいと考える場合には、以下のポイントを押さえておく必要があります。
サロンでの施術は、自分が施術しやすいように必要な設備を整えたり配置したりするのに対し、出張サロンでは出向いた場所のベッドや布団など、限られた設備で施術を行う必要があります。
寝具の高さや大きさなど、訪問先の環境はそれぞれなので、臨機応変に対応しなくてはなりません。慣れた環境や特別な設備がない場所でも、サロンで施術するときと変わらずにサービスを提供できる施術スキルが求められます。
出張の際の移動手段でメインとなるのが車やバイクです。電車や自転車で移動できない訳ではありませんが、駅からホテルなど施設まで移動するにも時間がかかります。
駅から離れた場所での出張を依頼された場合、移動時間のために1日に対応できる人数が少なくなってしまうでしょう。移動時間を考えると、車のほうが効率的でフレキシブルに動けます。自動車やバイクの免許を持っていない方は、まず運転免許の取得が必要です。
ホテルなどの施設に出張する場合、施設側との委託契約が必須です。出張サロンサービスを行っている会社に登録する場合も、その会社との委託契約を結ばなくてはなりません。お客様に依頼されたからと言って、勝手に施設に入る行為は不法侵入となってしまうため注意が必要です。
店舗型のサロンの場合、主にサロンの周辺や近隣のエリアでの集客がメインです。店舗や看板があるので、サロンがあることを知ってくれると利用してくれる人が徐々に増えていく可能性があります。
出張サロンの場合、自分が好きなようにエリアを拡大できますが、看板や店舗がある訳ではありません。宣伝に力を入れないと、なかなか集客できない可能性もあるのです。提携している施設などにチラシやメニューを置かせてもらう、SNSや利用してくれた人の口コミを活用するなど、さまざまな手法で集客施策を行う必要があります。
一般的なサロンと違い、出張サロンは初期費用や経費が少なくて済みます。店舗を構えずに開業できるため、自宅やテナントなどの店舗型サロンのように保証金や敷金・礼金、家賃が発生しません。内装工事やベッドなどの設備代、光熱費もかからないため、ほとんど資金がなくても開業できるでしょう。
タオルやオイルなど必要最低限のもので開業できるので、お金をかけずに無理なくスタートしたい方にとっては選択肢のひとつです。
出張サロンは店舗を持つ必要がないため、副業でもはじめやすいのが魅力です。マッサージスクールの卒業後、まずは経験を積みたいといった方は、店舗型サロンへ就職して技術やスキルを磨きながら、出張サロンで副業するといったスタイルで働くことも可能です。
今の仕事を続けながら、空いた時間をセラピストとしての活動にあてたいといった場合にもぴったりでしょう。家賃のことを考えず自分のペースで活動できるため、副業としての開業を目指す方にも向いています。
出張サロンはセラピストが直接客先まで出向く分、出張費を設けたりメニュー単価を上げたりできます。相場よりも価格を高めに設定できるため、施術できる人数は限られていても、それなりに売上を上げられる可能性があります。
また、家賃や光熱費などがかからず必要経費を抑えられるため、店舗型サロンよりも利益が残りやすいメリットもあります。
自分で集客し、自ら移動してサービスを提供するのをメインにしている場合、自分のペースで施術人数を決めることができますが、ホテルなど施設と契約していると、ハイペースで依頼が舞い込んでくることがあります。
ホテルの立地や規模によっては1人あたりの対応人数が多く、肉体的負担が大きくなることも考えられます。委託先と契約を結ぶ際には、対応人数や時間帯などの条件を確認した上で、自分に無理のない範囲で仕事を受けられるようにすることが大切です。
出張先でも満足度の高いサービスを提供できるよう、施設を揃える必要があります。お客様の寝具を使わない場合、施術用ベッドを毎回持参しなくてはならないため、持ち運び可能なベッドが必要です。その他、タオルやシーツ、マッサージオイルなど施術に必要な小物類も揃える必要があります。移動に車を使う場合、車の購入も考えなくてはなりません。
出張サロンは、店舗型サロンと違いお客様に見つけてもらうか、自分でお客様を探さなくてはなりません。店舗がないためWebサイトや地図情報のレビューなどを利用することも難しく、集客のハードルは高いと言えるでしょう。こまめにSNSを更新してPRする、出張可能なエリアでポスティングするなど、宣伝に工夫を凝らさなくてはなりません。
出張サロンに必要な設備・備品は以下のようなものです。オイルやホットタオルなどは、施術メニューによって不要な場合もありますので、ご自分のジャンルに合わせて確認しておきましょう。
店舗型サロンの開業と同様、出張サロンを開業する際にも開業届が必要です。税務署で「個人事業の開廃業等届出書」の提出が必要となります。
開業後は個人事業主となるため、毎年の確定申告も忘れてはなりません。1年間の収支について帳簿を作成し、それをもとに確定申告書を作成して税務署に提出する必要があります。
出張サービスの主な集客方法に、チラシやホームページでの案内があります。出張エリアにチラシをポスティングする、提携先の施設にチラシやホームページのQRコードを設置させてもらうなどが集客につながります。
しかし、出張サロンの場合、プライベートな空間に見ず知らずの人を入れるのですから、不安や抵抗を感じる方が少なくありません。そのような不安を和らげるために、訪問前にどんなセラピストが来るのかを見えるようにしておくようにしましょう。安心感を与える笑顔の顔写真を撮影し、チラシやホームページなどに掲載するのが効果的です。
また、不明瞭な料金体系は不信感を与える原因になってしまいます。部位別・状況別でコースを設定するなど、料金体系はなるべくシンプルにして明記するようにしてください。
サロンを開業している個人事業主や自営業者がWeb上で集客するためのサービスは多く存在します。スマホやPCで簡単に申し込めば使えるので、気軽に利用しやすくおすすめです。ツールによっては初期費用や月額利用料金、予約が成立した際の手数料がかかる場合もありますが、限られたエリアのチラシよりも広範囲のユーザーにアピールできるため、利用する価値はあると言えます。
出張サロンの開業を考えるとき、車の中で施術を行う「移動店舗車」で開業するのもひとつの手です。
車の内装をマッサージサロンの店舗と同じようにすることで、移動した先の土地でサービスを提供できるようになります。
移動店舗車での出張サービスは、出張サロンと店舗型サロンの良い面を併せ持ったような特徴を持っています。
一般的な出張サロンとは異なり、お客様のプライベートな空間に立ち入らずに済むのでお客様が安心して利用できます。身一つで動く出張サロンよりも費用はかかりますが、移動用の車両を用意できれば良いので、店舗を構えるよりも資金を必要としません。施術する際に必要な物を持ち運ばずに済み、サロンをまるごと移動するようなイメージなので、理想の設備やセッティングでお客様にサービスを提供できる点も魅力です。
キッチンカーなどのレンタルスペースを提供している場所であれば苦労はありませんが、行ったことのない場所で施術しようとしても、思うように駐車スペースを確保できない可能性があります。
また、移動店舗車の場合、移動した先々でお客様に見つけてもらうための工夫も必要です。SNSで事前告知する、その土地の知り合いやお客様に口コミを広めてもらうなど、集客方法を考えた上で動かないと、収入の見込みが立たないリスクがあります。
移動店舗車で開業する場合も出張サロンと同じように開業届が必要です。ほかにも、駐車場や営業スペースの持ち主に許可を得ることも忘れず行いましょう。なお、道路へ駐車して施術を行う場合には警察署の許可が要ります。無断での土地利用はトラブルに発展しかねませんし、公道の無断利用は違反となってしまいます。