美容事業を行うにあたり、注意しなくてはならない税金に「個人事業税」があります。
個人事業税とは、年間所得が290万円を超えた場合に年間所得の5%が課せられる税金ですが、これは免許を必要とする美容室や理容室の場合に限ります。
従って、公的な免許を必要としないリンパマッサージサロンの場合、個人事業税はかかりません。
ただし、まつエクサロンなど美容師免許を必要とするサロンが併設されていると、個人事業税がかかる場合がありますので注意が必要です。
個人事業主としてサロンを開業するにあたり、納めなくてはならない税金は以下の5つです。
個人事業主は、1年間で稼いだ所得に対して所得税が課税されます。所得には給与所得や不動産所得などさまざまな種類がありますが、リラクゼーションサロンを経営した場合で得るのは事業所得にあたります。
所得税は、毎年税務署に確定申告を行って納税します。赤字の年は、場合によって確定申告が不要なこともありますが、サロン開業後は基本的に所得税の確定申告が欠かせません。
所得税が国に納める国税なのに対して、住民税とは都道府県や市区町村に納める地方税です。所得税の確定申告を行ったとき、その申告内容に基づいて税額が計算されて、市区町村から納付書が送付されます。
納付書に記載された金額分を、期日までに支払うことが求められます。
店舗を借りている場合には固定資産税はかかりませんが、自宅を改装するなど、所有物件でサロン開業する場合には固定資産税がかかります。
マッサージを行う際の施術ベッドや待合室のソファ、受付カウンターなど、購入時の金額が10万円以上の設備には「償却資産税」がかかります。償却資産とは、固定資産のうち土地や建物以外の事業用に供することができる資産です。
これら資産については、毎年1月1日時点の状況を店舗のある市区町村に1月31日までに申告します。
課税売上高が1,000万円を超えた場合、消費税を納税しなくてはなりません。また、2023年10月からインボイス制度がはじまり、仕入税額控除の適用要件が変わりました。
これまでは免税事業者だった課税売上高1,000万円以下の事業者も、仕入れ時に支払った消費税額を差し引いて納税しなくてはならない制度が導入されています。
インボイス事業者として登録した場合、課税事業者として扱われるため、消費税の確定申告書もあわせて作成・提出が必要です。
サロン開業では、1年間で得た売上とかかった経費を計算して所得を申告する「確定申告」が必要です。確定申告は、事業所得のあるすべての人が行わなくてはなりませんが、「白色申告」と「青色申告」の2つがありそれぞれ特徴が異なります。
白色申告とは、個人事業主が所得税の確定申告を行う際に、青色申告以外で申告する確定申告の方法です。個人事業主のほか、1人社長の会社やフリーランスの人が、法人税の申告書を提出する際に青色申告以外で申告するのも白色申告となります。
青色申告よりも経理作業がシンプルで書類作成の負担が小さく、日々の記帳を元に作成した「収支内訳書」と確定申告を提出すれば完了します。
ただ、青色申告で受けることができる青色申告特別控除や青色専従者給与、少額減価償却資産の特例、純損失の繰り越しなど、所得税上のメリットを受けることができません。
従って、青色申告に比べて節税効果は少ない方法です。
青色申告とは、個人事業主、法人における確定申告の方法です。青色申告で確定申告をすると、最大65万円の特別控除が適用されます。控除額が増えれば納める所得税も下がるため、白色申告よりも節税効果があります。
また、家族への給与が必要経費に算入できる、赤字が生じた場合に翌年以後3年にわたって繰り越せるといったメリットもあります。
ただ、白色申告よりも複雑な複式帳簿での記帳が必要なほか、貸借対照表や損益計算書など複数の書類を作成しなくてはなりません。また、青色申告を行う場合、青色申告をしたい年の3月15日、もしくは開業した日から2か月以内に「青色申告承認申請書届」を提出している必要があります。確定申告で青色申告を行いたいと考えているなら、サロン開業時に開業届の提出と、青色申告承認申請届の提出を忘れずに行いましょう。
所得税は、まず1年間の収入を計算し、そのなかから経費を差し引き、経費を差し引いた金額から所得控除額を差し引き、その金額に応じた所得税の税率をかけ、税率控除額を差し引いて求めます。計算式にすると、以下のとおりです。
所得税の税率は、課税される所得金額に応じて7段階に区分されています。課税所得金額の速算表が国税庁により公開されていますので、以下を参考にしてください。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
ひとつ注意点として、2037年までは東日本大震災の「復興特別所得税」が加算されます。所得税の金額に、以下の方法で復興特別所得税を計算し、足した金額を申告する必要があります。
所得税が個人の所得に課される税金なのに対し、法人税は株式会社や合同会社などの法人に課される税金です。サロン開業の際に法人を設立するのであれば、所得税とは別に法人税がかかります。
所得税の申告は毎年2月16日~3月15日までに行いますが、法人税の申告は事業年度終了から2か月後までと、申告時期にも違いがあります。
その年のサロンの売上高を基準年としたとき、その翌々年のサロン売上に対する消費税納付が必要です。消費税の納付方法には、原則課税と簡易課税の2つがあります。
税金対策は、節税だけでなく倒産のリスクを抑えるためにも重要です。サロン開業ですぐに収入を増やすことは難しいですが、経費を抑えれば倒産リスクを抑えられます。家賃や光熱費などの固定費や人件費は、金額の大きい経費のひとつです。小さな節約や節税を心がけて資金切れを防ぎましょう。
サロンの運営にかかる経費であれば計上できるため、集客のためのアプリ登録料や研修費用、日々の練習に必要な材料や書籍代なども経費計上できます。また、受付で使用するペンやメモ帳など、文具などにも経費がかかるものです。業務に関わるものであれば、細かいものも忘れず計上するようにしましょう。
小規模企業の個人事業主が、事業を廃止したときや会社役員が役員を退職した際などに、積み立てた掛け金に応じて共済金を受け取れる制度です。掛け金は全額を所得控除できるので、将来に備えつつ節税につながります。
所得税の確定申告の期間は毎年2月16日~3月15日まで、法人税申告は事業年度終了から2か月後までです。スケジュールに合わせて計画的に経理業務を進めておくことが大切です。
税務署が納税者に対し、申告書類や内容が正しいかどうかを確認するために税務調査を行う場合があります。税務調査の電話連絡がきたら、日程調整を行って案内された必要書類を準備しましょう。税務調査で指摘を受けても、内容に従って修正申告書を作成し、税務署に提出すれば問題ありません。
税理士に相談すれば、確定申告書の書類作成や税務署への提出を代行してくれるほか、節税についても詳しくアドバイスをしてくれます。依頼を検討している場合は税理士事務所に問い合わせてみましょう。
初年度の所得税は、サロンの売上とかかった経費によって異なります。店舗を購入すると固定資産税もかかりますし、営業車がある場合には車の税金も収めなくてはなりません。開業資金とは別に、ある程度の納税資金の準備もしておくことが大切です。
非課税売上とは、例外的に消費税が課されない取引における売上です。非課税取引とは、土地の譲渡や貸付などの取引、有価証券の譲渡、貸付金や資産の利子、保険料などが対価になったサービス、郵便切手・印紙・証紙・商品券などの取引が挙げられます。
これらにおける取引は売上に消費税が課されないため、仕入れなどで支払った消費税額があったとしても原則として消費税を差し引くことはできません。
税金を滞納してしまうと、延滞税や延滞金が発生します。また、税金滞納によるペナルティとして督促状が送られてきます。督促状を無視して税金を納めないと、差し押さえや催告書が届きます。それでも支払いが行われない場合、所有する財産が差し押さえられて公売で換価され、納税に充てるための強制徴収手続きが行われます。
万が一、税金の支払いができないときには決して放っておかず、催告書に記載されている相談先に連絡するようにしましょう。
サロンを開業すると、所得税をはじめとしたさまざまな税金の支払いが必要になります。売上の記帳や収入を自力で管理するのは大変ですが、最近では簿記を作成しながら申告書類を効率よく作成できる、確定申告用の会計ソフトなども多く出回っています。
これらを活用するか税理士などのプロに相談すれば、時間と手間を大幅に削減できます。大きな負担をかけずにサロン運営に集中できるよう、自分に合った方法を探してみてください。
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