リンパドレナージュは、リンパの流れを阻害する要因を除去することが目的の施術方法。
このリンパドレナージュとは、1936年にデンマーク人のエミール・ヴォッター氏が開発したマッサージです。
エミール氏はリンパの流れを改善することで、体のさまざまな不調を改善できると考えられています。そのため、その手法をまとめたものをヨーロッパでは「リンパドレナージュ」と呼ばれているのです。
リンパドレナージュはリンパ浮腫に対しての保存療法としても選ばれる、立派な医療行為のひとつです。
患者さんに医療行為をする場合、医師や看護師などの医療従事者・医師の指示に従って施術をすること。さらに、理学療法士・あんまマッサージ指圧師の資格を持つ人でなければ施術を行うことができません。
国内には「リンパドレナージュ」という名称を使っている店が多くありますが、厳密にいえばそれらの店は薬機法・景表法違反だといえます。
また、リンパマッサージの資格を取得して開業する場合は「リンパドレナージュ」や「マッサージ」といった表現は避ける必要があります。特に「リラクゼーションサロン」などという表現に留めるようにしましょう。
リンパドレナージュの目的は、利用する人の心身をトリートメントし、健康をサポートする補完代替療法(ほかんだいたいりょうほう)として行われます。
この補完代替療法とは、西洋医学とは別のアプローチから心身の健康を維持するための方法です。
西洋医学と組み合わせることで効果をサポートし、さらにQOL(生活の質)をコントロールしやすくなるのです。
最近では医療の現場でも用いられており、今後さらなる需要が高まると考えられます。
リンパドレナージュはリンパ浮腫(ふしゅ)という症状を改善するために行われます。では、このリンパ浮腫とはどういった症状なのでしょうか?
リンパドレナージュのことを知るために、まずは浮腫についての基本的なことを学びましょう。
浮腫には全身性浮腫と局所性浮腫の2つの種類があります。リンパ浮腫はこのうち、リンパ管や静脈の経路に何らかの障害が起きる局所性浮腫に入ります。
このリンパ浮腫とは、リンパ節またはリンパ管が詰まったり狭くなったりすることでリンパ液が滞り、体の一部が極端にむくんでしまうことです。
体の組織や細胞の隙間にたくさんの水分が溜まってしまい、重度になると象の足のように太くなってしまうこともあります。
リンパ浮腫は、早期から中等度、重度になるにつれ現れる症状が変わります。
自覚症状がほとんどなく、本人もむくみを気づかないことがあります。
静脈が見えにくくなる、皮膚をつまんでもシワが寄りにくくなるといった症状が見られるようになります。
見た目からも腕や足が明らかに太くなり、この頃から本人も自覚できるようになります。
また、むくんだ腕や足に重さやだるさを感じることや少し動いたりししただけでも疲れてしまうこともあります。
中等度になると、むくんだ場所を指で押すと、その跡が残り続けるなど、明らかな異変が見られます。
初期・中等度で見られた腕や足の太さが見られるほか、ヒジや手首、指、ヒザ、足首といった関節が曲がりにくくなります。
動かした時も違和感があり、日常生活にも大きな影響が現れるでしょう。そのほか、皮膚の乾燥や硬くなること、毛深くなるなどの症状も特徴です。
むくみと浮腫に違いはありません。いずれも、皮下に過剰な水分が溜まってしまうことを意味します。
しかし、一般的に扱われる「むくみ」と何らかの病が原因となる「浮腫」には違いがあります。
原因 | 症状の重さ | |
---|---|---|
一般的な「むくみ」 | 立ち仕事やデスクワークで足の筋肉を動かさないこと、または偏った食生活・運動不足・寝不足といった生活習慣の悪さ、ホルモンバランスの悪化など | 日常生活で特に不便はない。生活習慣の改善など、簡単なケアで治る |
病気として扱われる「浮腫」 | ガン治療でのリンパ節切除・腎障害・心筋炎・静脈血栓性浮腫(心筋梗塞・脳梗塞・エコノミークラス症候群)・低蛋白性浮腫(肝障害・栄養不足)・甲状腺の障害・薬剤の副作用・放射線治療などの副作用・フィラリア症の影響・精神的な影響・アレルギーや炎症・クッシング症候群の影響・一次性リンパ浮腫(遺伝性の症状)など | 手足の重さ、全身のだるさ、肌の違和感などが現れる。水疱・潰瘍・いぼ・発熱を伴う蜂窩織炎(ほうかしきえん)なども現れる可能性がある。まれにリンパ管肉腫(ガン)に発展することもある |
リンパ浮腫になる原因の多くは、ガン治療による影響です。
ガン治療では、進行性のガンの転移を防ぐため、リンパ節を切除する治療を行うことがあります。
リンパ節が取り除かれると、リンパ液の逆流を防ぐ弁が閉じなくなってしまい、重力の影響などによってリンパ液が滞りやすくなります。これがリンパ浮腫の起こる原因となるのです。
手術が必要なほどの重度の場合を除き、リンパ浮腫は基本的に保存療法によって治療されます。
この保存療法とは、手術による外科的な処置以外の治療法のことを指します。症状や負担の緩和・自然治癒力の強化による症状改善などが主な目的です。
リンパ浮腫の治療法は、弾性スリーブやストッキングを使った圧迫療法とリンパドレナージュが挙げられます。
特にリンパドレナージュは、セルフケアによる方法とは違いプロの手技によってリンパの流れを改善できるため、多くの人に選ばれる治療法です。
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